大阪高等裁判所 平成元年(行コ)6号 判決 1989年11月15日
京都市右京区梅津南広町八一の三
ユニハイム四条梅津三一二号
控訴人
岡本啓二
右訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都市下京区間之町五条下ル大津町八番地
被控訴人
下京税務署長
竹見富夫
右指定代理人
高須要子
同
国府寺弘祥
同
松野英親
同
小崎安高
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 当事者の求めた裁判
1 控訴人
(一) 原判決を取り消す。
(二) 被控訴人が控訴人に対し昭和六〇年一〇月一四日付けでした控訴人の昭和五七年分、同五八年分及び同五九年分所得税にかかる各更正処分のうち原判決別表1の確定申告欄記載の各総所得金額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課処分を取り消す。
(三) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
主文と同旨
二 当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり訂正、付加、削除するほかは、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決二枚目裏四行目の「決定」を削除し、同六行目の「異議申立」を「異議申立て」と訂正する。
2 同三枚目表一〇行目の「適正が」を「適正か」と訂正する。
3 同五枚目裏一、二行目及び四行目並びに別表2の各「算出所得率」をいずれも「同業者所得率」と訂正し、別表2の表題中「(被告の主張)」及び五枚目裏二行目の「差引」を削除し、同六行目の「被告は、」を「大阪国税局長は、被告並びに」と訂正し、同行目の「下京、」を削除し、八行目の「税務署管内に」を「の各税務署長に対し、各管内において」と、九行目の「係争年分で」を「係争各年分を通じて」と、同行目の「に該当」を「をいずれも充足」と、一〇行目の「抽出し」を「抽出するよう通達したところ」と、別表4の表題を「同業者所得率表」とそれぞれ訂正する。
4 同六枚目表三行目の「なお、」の次に「右通達においては、申告書もしくは決算書の職業欄に」を加え、同七行目の「不服申立」を「不服申立て」と訂正し、同一〇行目の「右は、」の次に「事業規模の類似性を担保するため、」を、行目の「原告の」の次に「本件係争各年分にかかる」をそれぞれ加え、同一〇、一一行目の「金額の」を「金額を標準として、これが最も多額である」と訂正し、同一一行目の「上限とし、」の次に「最も少額である」を加える。
5 同六枚目裏三行目の「青色申告」を「青色申告者」と訂正し、同行目の「その」の次に「申告にかかる」を、四行目の「正確」の次に「であり、恣意なく選定されたもの」をそれぞれ加え、同四行目の「算出」を「その」と訂正し、同九行目の「3」及び「原告の主張するような違法はなく、」をいずれも削除し、一〇行目の「処分」を「処分のそれをいずれも」と、一一行目の「処分は適法である」を「処分に所得の過大認定の違法はない」とそれぞれ訂正する。
6 同七枚目裏九行目の「河川の橋」を「橋梁」と訂正し、一〇行目の末尾に「すなわち、原告は、測量業と設計業を行っていたのであるから、原告と被告の選定した同業者である「測量業(土木設計を含む)を営む者」とは営業の内容が異なり、被告の本件推計の基礎となった同業者の選定は不適切といわざるを得ない。また、右同業者が、原告と同様の下請ないし孫請の業者であるのか、あるいは直請の業者であるのか不明であることも、本件推計の合理性を判断するうえでの問題点の一つであるというべきである。」を加え、一一行目の「算出」を削除する。
7 同八枚目表二行目の「同業者の」の次に「測量業としての労働を提供している青色」を、「専従者」の次に「に対する」を、「給与」の次に「支払額」をそれぞれ加え、同行目の「給与賃金」を「給料賃金」と訂正する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加、削除するほかは、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決九枚目表四行目の「異議申立」を「異議申立て」と、六行目の「調査」から「必要性」までを「税務調査の適法性について」とそれぞれ訂正し、同七行目の「担当者が」の次に「原告に対する税務調査に当たり」を加え、同九枚目裏一行目の「被告の」から三行目の「担当者の」までを「権限ある税務職員が税務調査を行う際に、被調査者に対し、その旨を事前に通知をするかどうか、具体的な調査理由を告知するかどうか等実定法上特段の定めのない実施の細目については、調査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の」と、四、五行目の「五四年行ツ第二〇号」を「四八年七月一〇日決定、刑集二七巻七号一二〇五頁、同裁判所」とそれぞれ訂正し、同六行目の「・シユトイエル二六五号二一頁」を削除し、同行目の「ところ、」の次に「右のとおり自白したものとみなされた」を、七行目の「徴すると、」の次に「被告の」をそれぞれ加え、同八行目の「調査の」から同一〇枚目表四行目の「理由がなく」までを「同調査担当者に委ねられた合理的な選択の範囲を逸脱した違法なものであるということは到底できないから、右調査の違法をいう原告の主張は採用するに由ないというほかはなく」と訂正する。
2 同一〇枚目表七行目の「主張の」の次に「原告の本件係争各年分の」を一一行目の「多いとして、」の次に「原告の所得金額の推計の基礎とした同業者の選定に当たり、」をそれぞれ加え、一〇枚目裏三行目の「結果」の次に「並びに弁論の全趣旨」を加え、同一一行目の「河川の橋」を「橋梁」と訂正し、同行目の「等の」の次に「測量及びこれに基づく」を加える。
3 同一一枚目表一行目の「どこに」の次に「位置することと」を、二行目の「作業」の次に「を行い、これに基づき測量図面を作成し、計画線と現況線との差を表示する平面図、断面図の作成等を行い、さらに個々の構造物の設計図面の作成」を加え、三行目の「一般的な基準がないままに」及び六行目の「一方的に」をいずれも削除し、同六行目の「示される」の次に「金額を概ねそのまま受け入れることとなる」を加え、八行目冒頭から一〇行目の末尾までを削除し、一一行目の「(五)」を「(四)と」と訂正し、一一枚目裏二行目冒頭から三行目末尾までを削除し、四行目の「(七)」を「(五)」と、七、八行目の「被告は、その主張のとおり」を「大阪国税局長が原告と類似する同業者の所得率を把握するため」と、同八行目の「税務署管内に」を「税務署長に対し、各管内において」と、一一行目の「不服申立」を「不服申立て」とそれぞれ訂正する。
4 同一二枚目表二行目の「者」の次に「(これは、原告の本件係争各年分にかかる売上金額を標準として、これが最も多額である昭和五九年分の約二倍を上限とし、最も少額である昭和五七年分の約二分の一を下限としたものである。)すべて」を、同行目の「抽出し、」の次に「青色申告決算書に基づき、その売上(収入)金額、給料賃金及び外注費並びに一般経費を調査するように通達したところ、」を、三行目の「記載の」の次に「一四件の」を、同行目の「事例」の次に「(同表の算出所得金額欄記載の各金額は、右調査により把握した各同業者の売上(収入)金額から給料賃金及び外注費並びに一般経費を控除して算出された金額である。)」を、四行目の「同業者は」の次に「いずれも」を、四、五行目の「規模」の次に「等」をそれぞれ加え、五行目の「且つ」を「前記通達に基づき」と、六行目の「もので、」から七行目冒頭の「れるから、」までを「もので課税当局の恣意が介在する余地は認められず、帳簿書類の備付けを義務づけられた青色申告書による納税者でその申告が確定しているものであるから、その申告決算書に記入された数値の正確性は高いものということができ、かつ、抽出された同業者数も優にその個別性を平均化し一般化するに足りるものということができるから、」と訂正し、同七行目の「からそ」及び「算出」をいずれも削除し、同行目の「算定し、」の次に「これに基づき」を加え、八行目の「算出」を「本件係争各年分の事業」と、八行目の「ことは」を「ことに」とそれぞれ訂正し、八、九行目の「、真実に合致する蓋然性が高く、」を削除し、九行目の「合理性がある」を「何ら合理性に欠けるところはない」と訂正し、九、一〇行目の「認定」の次に「、判断」を加え、一〇行目の「原告は、」から同一二枚目裏二行目末尾までを削除する。
5 同一二枚目裏三行目と四行目の間に、
「(一) 原告は、原告は測量業と設計業を行っていたのであるから、被告の選定した同業者である「測量業(土木設計を含む)を営む者」とは営業の内容が異なり、被告の本件推計の基礎とした同業者の選定は不適切であると主張するけれども、しかし、前記認定のとおり、被告が同業者の選定に当たり同業者の範囲を「測量業(土木設計を含む)を営む者」と設定したのは、測量業を営むものが土木工事に関連する設計もしていることが多いところからであって、右に認定の原告の営業内容である道路、河川、橋梁等の測量、同図面の作成及びこれに関連する各種構造物の設計図面の作成等は、右被告の前提とした一般の測量業者の営業内容と類似性があることは明らかであり、原告の右主張は当を得ないものというほかはない。
また、原告は、被告の選定した前記同業者が、原告と同様の下請ないし孫請の業者であるのか、あるいは直請の業者であるのか不明であることも、本件推計の合理性を判断するうえでの問題点の一つであると主張するけれども、右のような業態の差異が両者の所得率にどのような差異をもたらすというのか、ひいては本件推計の合理性の判断にどうような影響を及ぼすものというのか何ら具体的に主張しないばかりでなく、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告と同程度の売上規模の測量業者の多くは下請ないし孫請として営業しているものと窺えるところであり、したがってまた、被告の選定した前記同業者の多くも原告と同様下請ないし孫請として営業している業者であると窺えるところであるから、いずれにせよ、原告の右主張も当を得ないものというほかはない。」
を加え、四行目冒頭の(一)を(二)と訂正し、同行目の「原告は」の次に「、測量業にかかる請負」を、同行目の「ついて」の次に「は」をそれぞれ加え、五行目の「決する」を「決せられる」と、六行目の「とおり、」を「ところ及び弁論の全趣旨からして、」とそれぞれ訂正し.、六行目の「代金額は、」の次に「原告のような営業規模、業態の業者については、概ね、」を加え、「一方的に」を削除し、六、七行目の「示される」の次に「金額にほぼ近い金額で決まる」を、七行目の「多い」の次に「ものと窺われる」をそれぞれ加え、同行目の「一般的には」を「右代金額の決定について」と訂正し、八行目の「原告と」及び「間に」の次にそれぞれ「右」を加え、一〇行目冒頭の「(二)」を削除し、一一行目の「とおり、」を「ところ及び弁論の全趣旨からして、」と訂正する。
6 同一三枚目表二行目の「決せられるもの」の次に「と窺えるところ」を、三行目の「経費」の前に「これと」を、「との」の次に「間には一定の」をそれぞれ加え、同行目の「ものと思料され、」を「ことは疑いを容れないところというべきであり、右のとおり、代金額が」と訂正し、三、四行目の「一方的に」を削除し、四行目の「示される」の次に「金額にほぼ近い金額で決まる」を加え、同行目の「相関関係」から五行目末尾までを「その発注者から示される金額自体、基本的には右の標準を勘案して積算された金額に基礎をおくものであることは推察に難くないところであって、いずれにせよ、収入と経費との間に一定の相関関係があることを否定することはできない。」と訂正し、六行目の「前記のとおり」を「また、原告本人尋問の結果によれば、」と、同行目の「経験者」を「経験豊かな同業者」とそれぞれ訂正し、同行目の「作業に」の次に「より」を加え、九行目の「経験者」から同一三枚目裏五行目末尾までを「前記同業者所得率算定の基礎とされた同業者は一四名と多数に上り、その余の選定基準と相まちこれら同業者の経験、能力等についての個別性を優に平均化し一般化するに足りるものであることは前示のとおりであり、本件全証拠によっても、原告の右作業能率の帰結としての所得率(経費率)について、右同業者との間に、同業者所得率を基礎とする前記推計の合理性を左右するような顕著な差異を見出すことはできない。」と訂正する。
7 同一三枚目裏六行目の「算出」を削除し、六、七行目の「同業者の」の次に「測量業としての労働を提供している青色」を、七行目の「専従者」の次に「に対する」を、「給与」の次に「支払額」をそれぞれ加え、同行目の「給与賃金」を「給料賃金」と訂正し、同九行目冒頭から一六枚目表七行目末尾までを、次のとおり訂正する。
「 しかしながら、もともと所得税法は、事業所得にかかる必要経費の計算に関し、原則として、事業者がその事業にかかる必要経費の計算に関し、原則として、事業者がその事業に従事した生計を一にする配偶者その他の親族に労務の対価を支払っても、その金額は事業所得の計算上必要経費に算入できないものとしたうえ(同法五六条)、例外的に、<1>いわゆる青色申告者が青色事業専従者に給与を支払った場合には、その労務の対価として相当であると認められるものは、これを事業所得の計算上必要経費に算入することができるものとし(同法五七条一項)、<2>いわゆる白色申告者については、その事業所得の計算上、各事業専従者につき一年分四〇万円を上限として必要経費とみなすこととしている(同条三項、ただし、昭和五九年法律第五号による改正前のもの)ところであって、このような法の規定するところに照らせば、原告がいわゆる白色申告者である以上、青色申告者である同業者の所得率を適用して原告の所得金額を推計計算するについては、右同業者の支払った青色事業専従者の給与額を必要経費から除外したうえ右同業者所得率を算出することが相当というべきである。そうしなければ、いわゆる白色申告者である原告が、その事業所得にかかる必要経費の計算上、青色申告者と同じ扱いを受けることとなり、右の法の規定するところに反する結果を招来し、却って不合理であるといわなければならないからである。
そうとすれば、青色申告者である同業者の所得率を適用して原告の所得金額を推計計算するについて、右同業者の支払った青色事業専従者の給与額をその必要経費から除外したうえ右同業者所得率を算出した被告の推計方法が不合理であるということは到底できない。
また、右のような事業所得にかかる必要経費の計算についての所得税法の規定とは別に、これを実質的、経済的観点から考察するとしても、前掲乙二号証の一ないし一三並びに弁論の全趣旨によれば、前記同業者の青色事業専従者はいずれも事業者の妻あるいは父または母であることが認められ、このこととその給与支給額やそれが各事業者の売上金額に占める割合等からすれば、右青色事業専従者は、前記認定の原告の両親もそうであったように、仕事関係の電話の取次、来客の応対、経理事務の補助等の労務に従事しているものにすぎないと窺えるところであり、本件全証拠によっても、右青色事業専従者中に測量業としての専門的な労務に従事している者がおり、したがって、その者に対する給与支給額についてはこれを必要経費に算入して同業者所得率を算出するように扱わなければ、原告の営業実態と同業者のそれとの類似性を失わせることとなり、ひいては本件推計の合理性に疑いを生ぜしめる結果となるとなすに足りる事実はこれを認めることができない。」
8 同一六枚目表八行目の「前記」の次に「原告の本件係争各年分の」を加え、同行目の「5の(二)」を「4」と、「算出」を「本件係争各年分の同業者の平均」とそれぞれ訂正し、九行目の「原告の」の次に「本件係争各年分の」を加え、同行目の「5の(三)」を「2」と訂正し、一〇行目と一一行目の間に、
「8 原告の本件係争各年分の事業所得にかかる特別経費の主張立証はない。
したがって、原告の本件係争各年分の事業所得金額は、別表2記載のとおりとなる。」
を加え、一一行目の「8」を「9」と、「雑所得」を「昭和五九年分の雑所得金額にかかる被告主張事実」とそれぞれ訂正し、一六枚目裏二行目を削除し、三行目の「四」を「三」と訂正し、同行目の「係争」の次に「各」を加え、四行目の「5の(三)」を「2」と、六行目の「事業」を「原告の本件係争各年分の総」とそれぞれ訂正し、七行目の「原告の」の次に「本件係争各年分の総」を加える。
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 川勝隆之 裁判官藤原弘道は、転補につき、署名、捺印することができない。裁判長裁判官 栗山忍)